2011年10月9日東京浅草にあるミレニアムホールで行なわれた第29回スペインギター音楽コンクールにおいて、門下生の森湧平くんが見事第3位に入賞しました。 6月に行なわれた第一次テープ審査で合格した49名が、この日の11時30分からの2次予選に参加しました(欠席者が4人)。課題曲は技術を必要とする「アラールの華麗なる練習曲(F.タルレガ)」一曲のみで審査されるという過酷なものでしたが、森君は思い切りよく、圧倒的なパワーと確かなテクニックで演奏。見事に難関を突破し、本選に臨める6人の中に選ばれました。本選会は17時から行なわれ、4番目に演奏しました。落ち着いたステージマナー、ゆっくりと演奏準備に入り、課題曲ソルの「マルボローの主題による変奏曲」をイントロから第5変奏をへてコーダまで、確実な技巧と豊かな音量で個性豊かに表現していました。素晴らしい演奏でしたが、その自在なアゴーギクゆえ古典的な演奏ではないと指摘もあったかもしれません。しかしその柔軟な演奏は彼の優れた長所でもあるでしょう。自由曲はモンポウの「コンポステラ組曲」よりプレリュード/カンシオン/ムニェイラの3曲を演奏しました。今回は急きょコンクールの1月前に楽器を変更するという状況下で臨みましたが、どの曲も充分に弾き込まれ、自信に満ちた演奏でした。結果は3位でしたが本選の舞台で全ての力を出し切れた満足感があったのではないでしょうか。そして現在福島県がおかれている立場、震災による放射能汚染や風評被害という悪条件の中、少しでも明るい話題を提供したいという気持ちも当然あったと思います。その意味でも今回の入賞は意義深い出来事といっても良いかも知れません。 本選結果 優勝した秋田勇魚さんは昨年の本選も出場しており、課題曲での素晴らしい演奏が記憶にあります。自由曲では残念ながら身体の不調で時間オーバーとなり、不本意な結果となってしまいましたが、そのぶん今年にかける意気込みは大変なものがあったと思います。演奏はさすがに落ち着きがあり、課題曲では古典様式を捉えた素晴らしい演奏でしたし、自由曲アセンシオの「内なる思い」よりの3曲は、優れた技巧とセンスの良さがひかりました。相当なプレッシャーがあったと思いますが、そのれを乗り越えた素晴らしい演奏でした。心から優勝を讃えたいと思います。2位の門馬由哉さんは自由曲でロドリゴの「ファンダンゴ」、リョベートの「スケルツオ・ワルツ」での華麗なテクニックが印象に残りました。4位の藤原盛企さんは自由曲にトローバの「ソナチネ」全楽章を鮮やかに演奏しましたが、制限時間を考えたせいか、弾き急いだ感じがあったのは残念でした。5位の中峰絵理果さんは課題曲で前半のミスが惜しまれますが、自由曲、タルレガの「アルボラーダ」やロドリーゴの「ファンダンゴ」での優れた技巧と魅力的な音には感心しました。6位の原秀和さんも優れた技巧的と独特の雰囲気を持った奏者です。ただ、もっと曲を深く掘り下げて、演奏していればと感じました。 |
審査委員長の濱田滋郎先生とのスナップ | 私も加わって | ||
6位に入賞した原秀和さんとのスナップ | 優勝した秋田勇魚さんとのスナップ | ||
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